KABANEGOのブログ

日常の出来事を書いて行きます

夢の話

お題「気になる番組」

世にも奇妙な物語に感化されたので、短編小説を書きます。

 

あれは、出張先での出来事だった。新卒の俺は色々な場所に飛ばされることも多く、今回は山奥のとんでもない田舎だ。そんな所に観光地があり、旅館も多く立ち並ぶ。そこに、取引先があり、深夜まで接待を行った。夜も遅いため近くの旅館に泊まる事にした。会社から次の朝すぐ戻って欲しいとの事だったので早朝4時に旅館を出た。ほとんど寝ていない状態での出発だ。こんな時間だとバスもこない。歩いて駅を目指す。

道がぐにゃぐにゃではないか。何度も転びそうになり、崖から落ちそうになる。来る時はバスで熟睡していて、気づかなかった。山奥は道が分かりずらい。人っ子一人もいやしない。お化けでも出そうな雰囲気の山道を急いでかけ下りる。そんな時、洞窟の入口があった。駅は真っ直ぐの方向だから、抜けられたらラッキーだ。そんな時、不意に小学生が横切った。こんな時間に学校に行くなんて、どんだけ遠いんだろうか。申し訳ないと思いながら、声をかけた。「あの、この洞窟って通れるかな。」小学生は答えた。「通れないよ。奥はすぐ崖で何人も死んでる。こっちからだと、近いよ。」と道案内をしてくれた。

途中、その子の家があり、少し警戒気味の小学生の母と、出会った。その小学生の母は「良かったら、上がっていってください。」と言った。妙だと思いながら、上がると小学生はゲームをしようと言った。それは、サッカーのゲームだった。小学生の目はキラキラとしており、とてもルールに詳しかった。少しだけならと思い、ゲームをすっかり楽しんでしまった。お礼をいい、切り上げ駅に走り電車に乗った。

気がつくと、会社の前にいた。どうやって帰ってきたのか、思い出せない。全てが夢だったのかもしれない。疲れすぎてるのかな。業務を終え、家に帰ってビールを飲む。すると、24時間テレビが放送されていた。あ、もうそんな時期か。お盆休みなんてない自分からすれば、今日がいつかなんて関係ない。TVをみていたら、電流が走ったように時が止まった。あの小学生が出ているではないか。プロのサッカー選手を目指していて、強豪のエースの少年団に入っていたそうだ。だが、白血病になってしまい、落ち込んでいる所を憧れの選手が会いに来てユニホームをプレゼントしていた。無邪気に笑い、喜んで「絶対プロサッカー選手になる」と言っていた。お願い死なないでくれと、祈った。今は意識がない状態のようだ。でも、確かに俺は今日出会ったんだ。あの子に。

あの子は生と死の狭間で戦っているのもしれない。俺に生きる道を教えてくれたんだ。本当は学校に通いたい。友達とゲームをしたい。サッカーがしたい。そう感じられんだ。ありがとう。そう呟いた。

自分もそうされたように、あの子にも生きていて欲しい。そう祈った。

5年後、サッカーの試合をみていたら、あの子がいた。期待の新星だそうだ。俺はサッカーなんてルールも知らない。だけど、あの子のファンだ。一生応援する。あの子が覚えてなくても、俺はずっと忘れない。


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